HOSOO TOKYO
東京駅から徒歩一分の都心に位置する、西陣織を扱う店舗の計画である。
ファッションの本質は、寒さをしのぐといった機能性ではなく、生地のかたちや色、質感といった素材の個性と、それらを有機的に織りなすことによって立ち上がるイリュージョンにあると考え、建築的なアプローチでそれを体現することを考えた。西陣織で覆われた高さ4m、奥行き60cmの三角柱による列柱や、艶やかな焼付塗装を施した鉄板のファサード、冷ややかな表情を帯びたギリシャ産の大理石の組み合わせが、美の均衡を紡ぎ出す。
衣服で身体を覆うとき、物質的には生地を身につけているだけにもかかわらず、人体には想像上の奥行きと広がりがもたらされる。この店舗では鏡をふんだんに用いることで空間の拡がりが増幅され、白色の研ぎ出しで仕上げられた床は室内に入射する自然光を照り返す。列柱の間から垣間見られる現実とそれらの眺めが混ざり合うことで、衣服がそうであるように、物質的には存在しない空間の幻影を生み出している。
- 竣工
- 2023年
- 用途
- 店舗
- 延床面積
- 113m²
- Web掲載
- architecturephoto®