この邸宅は、普段は東京で暮らす施主の別荘である。したがって、日常の生活から切り離された、静かな時間を過ごすための場所として計画されている。

宝飾品は宝飾品でしかないがゆえに贅沢であり、直接的な生活の機能を持たない仏間には品格が宿る。普段の暮らしにおいて、私たちは生活によって縛られているが、そうした拘束から外れる「非日常」の空間にこそ、人生の豊かな時間は立ち現われる。

生命が誕生した海や地球は青い色を湛えている一方で、宮沢賢治の生前最期の詩である「眼にて云ふ」で詠われたように、末期の眼には世界は青い色を帯びるという。施主の持っていた「青色」というイメージを膨らませ、「青から生まれ、青に還っていく」という生命の循環を建築によって表現し、青色を挿した。

竣工
2019年
用途
別荘
延床面積
56m²