Hiroko Nakakita

神戸の旧居留地に位置する大正時代に建てられた建築の一角に、ある画家のためのギャラリーを計画した。訪れる人が地上の世俗から切り離され、ひとりに立ち還ることのできる空間と時間を、ギャラリーに埋蔵することを考えた。

日常とは切り離された舞台をつくりだすために、縁取りとして黒御影石を用いている。鑑賞者はその内部の空間に佇むことはできるが、周囲の領域には砂利が敷かれており、二つの空間は分け隔てられている。人間のための場所を神聖な禁足地で取り囲むことで、静謐で礼拝的な空間を実現することを意図した。

空間の闇と絵画の鮮やかな色彩、物質の多様な質感、繊細な音の響きが一体となって、鑑賞者の感性を細やかに開く。訪れる人の心に静謐な場所が現れ、日常から外れた、別の世界が広がることを意図して設計した。

竣工
2021年
用途
ギャラリー
延床面積
61m²
Web掲載
VOGUE